廊下を小走りに駆けて、技術開発局局員、は局長である十二番隊隊長の部屋に向かった。
とある物質の研究を局長であり恋人でもある浦原喜助からまかされて観察していたのだが、ほんの僅かではあるが変化があったのだ。些細なことでも報告してくれと言われていたので、は彼に会えるうれしさも手伝って隊首室に続く回廊を走っていた。
隊首室の扉の前で止まると、中から出て来た小柄な女性とぶつかりかけてはたたらを踏んだ。



「わ、と」

「うわ」



お互いに声を上げてしかし如何にか尻餅だけはつかないように踏ん張った。ごめんなさいとみいが慌てて言おうとするが、其の前に女性はばつが悪そうに眉を寄せてを見た後、何も言わずに行ってしまった。ぽかんと彼女を見送り、彼女の姿が見えなくなってから我に返る。



「きょ、局長……?」

?」



声だけで気付いたのか、中からきょとんとしたいつもと変わらない声が聞こえてくる。其の声に中には彼しかいないのだと分かって、は自然ににやける口元を押さえて中に入った。先ほどの女性の為だろうか、テーブルの上にはお茶が出ている。其れを自ら片付けながら喜助は顔をに向けて笑った。



「何かありました?顔真っ赤ですよ」



寒いこの時期に、暖かい開発局から走ってくれば頬も赤くなるだろう。苦笑する喜助には恥ずかしそうに頬を覆って彼を睨みつけ、しかし直ぐににこりと微笑んだ。きりっと表情を引き締めて脇に抱えていたファイルを開き報告を始める。



「例の物質に変化が現れましたことをお伝え申し上げます」



其の言葉に喜助の眉が微かに上がる。ファイルの中身を読み上げながらが其の表情を窺うと、其れに気付いた喜助はにこりと笑んだ。其の笑顔にときめいて、は慌ててファイルに視線を戻す。ほんの少しだけ変わった霊圧の濃度が一体何を指しているのかわからないが、喜助の顔を見ていると実験は予定通りに行っていることが分かる。




「観察を続けます……って局長?」



ファイルから顔を上げると目の前にいたはずの喜助の姿が無かった。ぱちくりと一度瞬いたと同時にいつの間にか後ろに回ったらしい喜助に抱きすくめられ、ソファに座らされた。俗にコアラ抱っことか言う抱き方で後ろから抱きすくめられ膝の上に乗せられて、は訳が分からずに目を瞬かせた。



「局長?」

、此処には誰もいませんよ?」

「……喜助さん」



含んだような笑みを浮かべて耳元で囁かれ、はくすぐったさに身を竦めて愛しい恋人の名を呼んだ。すると吐息がの項を擽り、何度も口付けられる。は身を竦めてふるふると頭を振った。しかしの体を逃がさないように、喜助はの腰に腕を回している。



「何で逃げるんスか」

「だって、昨日お風呂入ってないんですもん……」



消えるように小さな声でが答える。技術開発局は変人の巣窟と名高いが、彼らだって開発に命をかけているのだ。実験の為だったら一日や一週間普通に入浴なんてしない。食事だって忘れる者もいるし、仮眠用の毛布なんて使われていない。そんな中で生活していたなので別に気にしていなかったのだが、恋人の前で其れは恥ずかしいと羞恥に首筋まで真っ赤に染めている。そんなに苦笑して喜助は日に当たっていない真っ白な項にきつく口付けを落とした。



「気にしませんよ。それより、もっとイイ事しましょう?」



真紅の印を刻んで、喜助が笑った。はほんの少し戸惑ったような息を漏らしたが、ややおいて恥ずかしそうに頷いた。最近彼の実験やら自分の実験で体を合わせる時間どころか合う時間すらなくて、だからこそ彼といられる時間が嬉しい。
頷いたくせに、喜助がの袷から手を侵入させると抵抗するように彼の腕を掴んだ。



「やっぱり、まだ明るいですし……」

「関係ないですよ」

「私汚いですし」

「気にしないって言ったじゃないっスか」

「……恥ずかしい……です」



自分の体を隠すように腕を回したに喜助は忍び笑いを漏らした。愛しい恋人は何時までたっても出逢った頃と同じで自分を愛してくれる。それ故に見せるまだるっこしいほどの羞恥心は、逆に自分の感情を煽ることを彼女は知らない。
クスクスと笑んで喜助はの腕を軽々払いのけて袷に手を進入させた。頬に舌を這わせ、其処から唇に噛み付くように噛み付く。



「……っ」



喜助の骨ばった指がの胸を包み、の口から噛み殺すような息が漏れた。何度も唇の端に口付けながら揉みしだくと、も求めるように顔だけを喜助に向ける。の真っ赤な唇に吸い付くように口付けて、唇の割れ目から舌を侵入させる。まさぐるように舌を動かすと、も舌を懸命に絡めてくる。其の間も手は彼女の胸を解し、先端の突起を刺激する。



「…ふぅ…ん……」



の鼻から甘い息が漏れ、喜助は微かに眼を開けた。真っ赤な顔をして夢中になって舌を絡めてくる恋人の眼には微かに涙が溜まっていて、先端を弾くと溜まらずに少しだけ喜助の舌を噛む。右手での胸を弄りながら左手で結ばれた帯を解き、微かな衣擦れの音を伴って袴が床に落ちる。
一度痺れるように舌を吸って、喜助は名残惜しそうに唇を引き剥がした。間を伝う銀糸が切れると、は力なく喜助の胸に寄りかかる。



、起きれます?」

「……え……?」

「こっち向いてください」



言うが早いか喜助はの体を抱き上げて向かい合わせになるように膝に据わらせた。ほてったの体は疲れているのかぐったりしているようで、は顎を喜助の肩に預けて眼を閉じている。ぽんぽんと一度あやす様にの背を叩き、喜助はの額に口付けた。首筋に唇を落とし、鎖骨へと這わす。其の間に手はの腰を撫でてしっとりと濡れている蕾を突いた。



「あんっ」



不意にの口から甘い嬌声が漏れる。割れ目をそっと撫でて膨張した突起を摘むとの躯がビクリと跳ねた。しかし歯を食いしばって喜助の首にしがみ付いての口から可愛い声が漏れることはない。何時だって声を漏らさないように噛み殺す恋人に喜助が言うことは同じだ。



「声、我慢しなくていいっスよ」

「やだ……っ」



いつもはそう言うとたどたどしくでも声を出すのを我慢しなくなるのに、何故だか今日はは首を横に振った。其の拍子に大きな眼に溜まった涙が零れる。の予想外の言葉に喜助は一瞬言葉を失い、次いで小さく溜息をついた。膨張した突起を押しつぶすようにグリグリと刺激しながらにやりと笑む。



「何で我慢するんスか」

「他の人に、聞かれたらやだ……っ」

「そんなこと言われると逆に泣かせたくなちゃうっスね」



囁いて、濡れそぼった蕾に指を差し込んだ。グプッと卑猥な水音がして、は引きつった息を吐き出す。きつく締め付けてくる内壁を擦りながら胸の飾りを口に含んで転がすとは喜助の首にしがみ付いて小刻みに首を振った。



「喜助さん…っ」

「可愛いっすよ」



飄々とした笑みを浮かべて囁いて、突起を吸って舌で押し付ける。指はの内壁を擦り上げ差し入れを繰り返しているが、は歯を食いしばって声を押し殺していた。熱い息が喜助の髪を揺らし、彼の背にゾクリと冷たいものが走る。
指を一度引き抜いて、今度は二本差し込んだ。さっきよりも早く抜き差しを繰り返し、内壁を爪で引っかく。



、もう少し腰上げて」



そう言うとは小さく頷いて躯を持ち上げた。ぎゅっと喜助にしがみ付いて、ボロボロ零れる涙を拭いもせずにただ襲ってくる快感に耐えている。しかし、と喜助がの中を引っ掻き回して舌では胸の突起を噛み解した。周りを気にしているということは、まだ行為自体に夢中になっていないということだ。其れがほんの少し淋しさに似た感情を喜助に与える。



「喜助さん…喜助さん……」

、愛してます」



耳元で囁いて、喜助は指を総て抜いた。蜜でべたべたになった指も自分の袴も気にせずにぎゅっとを抱きしめる。何度も何度も小さな吐息で自分を呼ぶに優しく口付けて、硬く立ち上がった自身を蕾に宛がった。
焦らすようにゆっくりと競りあがってくる指とは全く違う熱い其れに、の口から引きつった声が漏れる。



「…あ、ん、あぁ!」

……」



耐え切れず上がった彼女の嬌声を飲み込むように喜助は口付けた。やや乱暴に口内を犯し、直ぐに離す。それからまた口付けて、離す。其れを繰り返しながらゆっくりゆっくり自身を進めていく。其のたびにの口からは小さな声が漏れ、喜助は満足したようにの頭を自分の胸に押し付けた。



「や、あ…喜助、さんっ」



くぐもって聞こえたの声に柔らかく笑みを浮かべ、の腰を掴んで激しく打ち付けた。の口から悲鳴のような声がくぐもって聞こえ、ソファのスプリングが軋んだ。ぎゅっとしがみ付いてくるの鎖骨に印を刻みながら律動を早めるとは縋るように彼の名前を掠れた声で呼ぶ。



「喜助さん、喜助さんっ」

、気持ちいいっスか?」

「ん……っ」



が小さく呟いた所で喜助は更に激しく腰を打ち付ける。室内にはの上げる嬌声と肌のぶつかる音、接合部から響いてくるグチュグチュという卑猥な水音だけ。何度も口付け、気が遠くなるほど腰を打ちつけ、漸く喜助はの最奥を貫いた。



「喜助さんっ愛してます……あぁ!」

「…………」



一際高いの声が上がり喜助を締め付け、喜助はの中に白濁の欲望を吐き出した。











「………ちょっと付けすぎちゃったっすねぇ」



行為後のぐったりしたに着物を着せてやりながら、喜助は苦笑して眉を寄せた。の胸元には大量に印が刻まれていて、自分でやったにも関わらずやりすぎだと思えるほどだ。は未だ頭がはっきりしないらしく、ボーっとしている。



「気持ち良かったっスか?」



飄々とした笑みを浮かべての顔を覗き込むと、は羞恥に頬を染めて喜助から顔を背けた。こてんと彼の胸に頭を預けると、喜助は抱くようにの頭に腕を回す。ややあって、はポツリと呟いた。



「気持ち良かったですよ」

「それはよかった」

「……あの」



窺うように言っては喜助を上目遣いに見上げた。行為の後で紅い頬と潤んだ瞳に見られて、喜助は下半身がやばいと思った。しかしいくらなんでもたった今やったばかりでもう一度というのは盛りすぎだと思う。しかも着替え終わったばかりだし。若いのならともかく、それでは年上としての威厳もないだろう。そう結論付けて喜助は理性を総動員して笑って見せた。



「なんすか?」

「……何でもないです」

「気になるじゃないっスか」

「…………さっきの女の人、誰ですか……」



窺うようにが見つめてくるので、自分は何かをしたかと考えをめぐらせるが思い当たることなどなく、一度首をひねった。しかしのさっきのという言葉に思い当たる節を見つける。もしかしたらやきもちでも焼いてくれたのかと嬉しくなって、浮かんでくる笑みを消すことが出来なかった。



「さっきのは古い友人っすよ。アタシが好きなのはだけっス」

「本当?」

「信じられません?」



苦笑して訊くと、はふるふると頭を振った。安心したように小さく息を吐いて眼を閉じるので、そっと綺麗な髪に唇を落とす。其れに気付いてが喜助を見上げた。にこりと笑んで、喜助はの髪を一房指に絡めた。



「……愛してますよ」

「喜助さん?」



小さく呟くと、は小首を傾げてじっと喜助の瞳を見つめた。自分しか映っていない彼の瞳が戸惑った色を浮かべるので、とりあえず笑ってみる。すると喜助は眼を閉じて息を吐き出した後、の細い肩を抱き寄せた。



「この実験が成功したら、結婚しましょっか」

「………はい」



突然の申し出でも、自分を抱きしめてくれている彼の腕が嘘ではないことを証明していて、は頬を染めて頷いた。
この実験が、成功したら……。其の実験を思い出し、はばっと顔を上げる。



「喜助さん!私実験に戻ります!!」

「一緒に局まで行きましょうか」

「はい」



この実験は二人で成功させたいと、そう思った喜助の言葉には大きく頷いてニッコリと微笑んだ。




-fin-

喜助さんの裏とのリクエストでしたが如何でしょう……。
初めは鬼畜だったくせに激しく偽物です。
ちなみに、彼女がぶつかりかけたのは夜一姉さまです。
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